
まずは施工事例の見方を押さえる
外壁塗装の「良い事例」は、見栄えだけでなく、課題設定と解決策、数値での根拠、再現性まで開示されています。築年数や外壁材、方位、周辺環境を前提条件として示し、塗料の種類や色、工期、保証、完工後の変化まで追える事例は信頼度が高いです。本記事では、戸建てを中心に複数の事例を取り上げ、色選び・耐久性・省エネ・工期短縮の観点で解説します。
事例でチェックすべき5要素
・建物条件(築年数、延床、外壁材、屋根材、立地)
・劣化症状(チョーキング、ひび、コーキング劣化、藻カビ)
・採用仕様(下地処理、シーリング、塗料グレード、艶)
・工程と工期(天候予備日、乾燥時間、検査)
・結果(見た目、体感温度、汚れの出方、保証)
写真だけに惑わされない
ビフォー・アフターは照度や撮影条件で印象が変わります。塗板や色番号、艶感、方位別の見え方、完成後3〜6カ月の経過写真があると判断精度が上がります。
事例1:30坪サイディング住宅の総合リフレッシュ
築15年、窯業系サイディング、延床30坪。南西面でチョーキングと目地劣化が進行。家を明るくしたいが、汚れも目立たせたくないという要望でした。ここでは、下地から付帯まで一体で見直すことで、見た目と持ちのバランスを取りました。
採用仕様と色設計
下地は高圧洗浄後、脆弱旧塗膜をケレン処理。シーリングは打ち替え主体。下塗りに浸透シーラー、中上塗りはラジカル制御型の低汚染タイプ。色はグレージュ中明度、艶は3分艶。屋根はダークグレー、付帯は黒で統一しました。
工期と効果
足場〜解体まで12日(予備日2日含む)。完成直後の明度は高いが、3分艶で反射を抑え落ち着いた印象に。西面の熱ごもり感が軽減し、夏場の午後の室内温度上昇が緩やかになったとの声。低汚染性で雨だれ痕の発生が抑えられました。
事例2:濃色から淡色へ大幅色替え
築20年、モルタル塗り。既存は濃ブラウンで、退色ムラと汚れが目立つ状態。街並みに合わせて明るい外観にしたいという希望でした。ただし濃→淡の色替えは“止まり”の悪さから発色に注意が必要です。
採用仕様と色設計
下塗りに隠ぺい性の高いホワイト系フィラーを選定し、下塗りを2回。上塗りはフッ素系艶消しに近い5分艶、色はアイボリー。窓回りはシーリング色も外壁に合わせて統一し、面の連続性を確保しました。
工期と効果
乾燥時間を厳格に取り、塗装3工程で4日、補修と養生を含めて合計14日。明るい色でも面積効果で派手になりすぎないよう半トーン落として正解。夜間の照明映えが良く、防犯面でも視認性が高まりました。
事例3:海沿い立地での低汚染×高耐候設計
築12年、金属サイディング、海から500m。塩害と砂じんで早期に汚れが出やすい立地。ここでは、低汚染トップと付帯の素材選びで、クリーニング頻度と美観維持の両立を狙いました。
採用仕様と色設計
上塗りは無機ハイブリッド系、親水性トップで雨筋を洗い流す設計。色はライトグレー、屋根はやや濃いグレー。付帯は艶消しブラックで引き締め、基礎は中明度グレーに調整。金物はステンレスに更新し、錆の再発を抑制しました。
工期と効果
強風日を避けたため実日数は13日、予備日を含めて16日で完了。完成後6カ月の点検で海塩の付着が少なく、雨だれ痕も最小。外壁の温度ムラが減り、膨れやワレの兆候なし。
事例4:屋根遮熱と同時施工で体感温度を改善
築18年、サイディング+スレート屋根。2階の暑さが悩みで、冷房効率の改善を最優先に。同時施工で工期を圧縮し、足場コストも効率化しました。
採用仕様と色設計
屋根は高日射反射の遮熱塗料を採用し、外壁は中明度のグレーで反射と汚れのバランスを確保。艶は5分艶。シーリングは高耐候タイプを全面打ち替え、付帯も耐候性の高い塗料で統一しました。
工期と効果
足場共有で合計13日。夏季の午後2階の体感温度が和らぎ、エアコンの立ち上がり時間が短縮。光沢を抑えたことで大きな面でも落ち着いた表情に仕上がりました。
事例5:アクセントを効かせたツートーンで印象刷新
築10年、サイディング。単色ののっぺり感を解消したいという要望。コーナー部と玄関周りに濃色を配し、建物の“骨格”を際立たせる配色にしました。
採用仕様と色設計
ベースはグレージュ、アクセントはチャコール。比率は6:3:1(ベース:アクセント:付帯)を目安に、樋と破風はアクセントに合わせて統一。艶は外壁3分、付帯艶消しで質感差を演出。
工期と効果
色分けの養生に時間をかけ、実作業11日+予備2日。立体感が増し、玄関ファサードの格上げに成功。将来の色替えもしやすい設計で、次回塗り替えの自由度も残しました。
事例から導く成功のコツ
具体の数値や工程を伴う事例は、住まいへの“再現可能な答え”になります。最後に、複数事例を通じて見えてきた共通項をまとめます。色と耐久、工期と生活影響、費用感のバランスを同時に満たす視点が重要です。
色は中明度・低汚染・艶コントロールが安定解
外壁は中明度のグレイッシュ、付帯は少し暗く、艶は3〜5分を基本に。面積効果で派手になりにくく、汚れの目立ち方も緩やか。屋根が濃ければ外壁はやや明るく、全体のコントラストを整えます。
工期短縮は“段取り”で、乾燥は削らない
予備日設定、材料の前倒し手配、A4塗板での事前合意、LINE等での進捗共有が効きます。乾燥・硬化を削る短縮は品質低下に直結するため避けましょう。
施工事例ページを比較するときのチェックリスト
最後に、業者選びや見積比較で役立つチェックポイントを掲載します。事例の“質”を見抜くことで、完成後の満足度が大きく変わります。
事例の情報量と透明性
築年数、外壁材、劣化症状、工程、使用塗料(メーカー・グレード)、色番号、艶、工期、保証の有無が明記されているかを確認。写真は方位別・時間帯別があると〇。
アフター点検と保証の扱い
完工3〜6カ月後の経過報告や定期点検の記録があると信頼度アップ。保証の範囲(付帯含むか、シーリングは別か)も事前に把握しておきましょう。
まとめ:自宅に“転用”できる事例こそ価値
施工事例は見るだけで終わらせず、自宅条件に当てはめて要素分解するのがコツです。色域・艶・塗料グレード・下地処理・工期・予備日・保証の7点をそろえれば、完成時の満足だけでなく、数年後の見え方も安定します。まずは気になる事例を3件ほど選び、塗板と現地での色確認まで含めて具体化していきましょう。
