
外壁塗装の下地処理が仕上がりを左右する理由
外壁塗装というと、どんな色にするか、どの塗料を選ぶかに目が行きがちですが、実は仕上がりや耐久性を大きく左右するのは「下地処理」です。下地処理がしっかりしていないと、どれだけ高級な塗料を使っても、数年で剥がれたり、ムラが出たりしてしまいます。反対に、丁寧な下地処理がされていれば、標準的な塗料でも長持ちしやすく、結果的にメンテナンスコストの削減にもつながります。
下地処理とは何をする工程か
下地処理とは、塗装を行う前に外壁の状態を整えるための一連の作業のことです。汚れやカビ、古い塗膜を落とし、ひび割れや欠けを補修し、塗料がしっかり密着するように準備していきます。具体的には、高圧洗浄、ひび割れ補修、シーリング工事、ケレン作業、サビ止め塗布などが含まれます。
これらの作業は外から見えにくく、工事が終わってしまうと確認しづらい部分でもありますが、建物を長く守るうえでは欠かせない大切な工程です。
下地処理を怠ると起こるトラブル
下地処理が不十分なまま外壁塗装をしてしまうと、次のようなトラブルが起こりやすくなります。
・塗装後数年で膨れや剥がれが発生する
・ひび割れから雨水が入り、内部の劣化が進む
・カビや藻がすぐに再発して見た目が悪くなる
・サイディングの反りや浮きが悪化する
こうしたトラブルが起きると、せっかく塗り替えをしたのに、また早い段階で補修が必要になり、余計な費用がかかってしまいます。外壁塗装の下地処理は「見えない部分の品質」を決める重要なポイントだと意識しておくと安心です。
外壁塗装の下地処理の基本的な流れ
実際の現場では、外壁の素材や劣化状況によって細かな内容は変わりますが、外壁塗装の下地処理には共通した基本の流れがあります。この流れを知っておくことで、見積書の内容を理解しやすくなり、手抜き工事を見抜く目を養うことにもつながります。
高圧洗浄で汚れや古い塗膜を落とす
まず行うのが、高圧洗浄による外壁の洗浄作業です。長年の汚れやホコリ、排気ガス、コケやカビなどを、水圧を利用してしっかり落としていきます。表面に汚れが残ったままだと、塗料がうまく密着せず、早期の剥がれの原因になります。
場合によっては、ただ水で流すだけでなく、洗剤やカビ取り剤を併用しながら丁寧に洗浄することもあります。高圧洗浄後は、しっかりと乾燥させる時間をとることも大切なポイントです。
ひび割れ・欠損部の補修
次に行うのが、ひび割れや欠けた部分の補修です。モルタル外壁であれば、細かいクラックに専用の補修材を充填したり、大きなひび割れにはUカットやVカットと呼ばれる工法で補修する場合もあります。サイディング外壁の場合も、割れや欠けを放置せず、必要に応じて部分的な交換やパテ処理を行います。
この段階でしっかり補修しておかないと、塗装をした後でも外壁の動きに追従できず、再びひび割れが目立ってしまうことがあります。外壁塗装の下地処理は、見た目だけでなく構造を守るための大事な役割も担っています。
ケレン作業とサビ止めで金属部を保護
鉄部や金属製の手すり、ベランダ笠木などがある場合は、ケレン作業も重要です。ケレンとは、サビや古い塗膜をヤスリや電動工具で削り落とし、表面を整える作業のことです。サビが残ったまま上から塗装しても、すぐに浮きや剥がれの原因になってしまいます。
ケレン作業の後は、サビの進行を防ぐためにサビ止め塗料を塗布します。ここまで行って初めて、上から塗る仕上げ塗料が本来の性能を発揮できるようになります。金属部分の劣化が気になっている方は、見積もりにケレンとサビ止めが含まれているか必ず確認しましょう。
シーリング(コーキング)工事で目地を保護
サイディング外壁には、ボード同士の継ぎ目やサッシまわりなどにシーリング材が打たれています。シーリングは、建物の動きを吸収したり、雨水の侵入を防ぐ役割を持つ大事な部分です。経年劣化でひび割れや肉痩せが進むと、そこから雨が入り込み、内部の腐食やカビの原因になります。
そのため、外壁塗装の下地処理では、シーリングの打ち替えや打ち増し工事がセットで行われることが多くなっています。古いシーリングを撤去し、新しい材料に打ち替える「打ち替え」が基本ですが、状況によっては既存を残したまま上から充填する「打ち増し」を行う場合もあります。
外壁材別に見る下地処理のポイント
外壁塗装の下地処理は、外壁材の種類によって注意すべきポイントが変わります。ご自宅の外壁がどのタイプなのかを把握し、それぞれの特性に合った下地処理がされているかを確認することが大切です。ここでは代表的な外壁材ごとの違いを見ていきましょう。
サイディング外壁の下地処理
現在の住宅で多いのが、窯業系サイディングと呼ばれるボード型の外壁材です。サイディング外壁の下地処理では、目地部分のシーリング工事が特に重要です。シーリングの劣化を放置すると、ボードの反りや浮き、内部の雨漏りにつながりやすくなります。
また、サイディング表面の模様や意匠性を活かしたい場合には、クリヤー塗装を選ぶケースもありますが、この場合はチョーキングが強く出ていないことが条件になります。状態によっては通常の塗りつぶし塗装に切り替えた方が良い場合もあるため、事前の診断が欠かせません。
モルタル外壁の下地処理
モルタル外壁は、ひび割れが入りやすいという特徴があります。細かなヘアクラックであれば、弾性塗料を使うことである程度カバーできますが、大きなひび割れや構造クラックの場合は、下地からしっかり補修しないと意味がありません。
また、モルタル外壁は凹凸が多く、汚れやカビが付着しやすいため、高圧洗浄やバイオ洗浄でしっかり洗い落とすことも大切です。そのうえで、下塗り材としてシーラーやフィラーを適切に選び、密着性とひび割れ追従性のバランスをとりながら仕上げていきます。
ALC外壁や屋上まわりの下地処理
ALCパネルを使った外壁や、屋上まわりの立ち上がり部分は、一般的な外壁よりも防水性に注意が必要です。ALC自体は軽量で断熱性に優れた素材ですが、そのままだと水を吸いやすい性質があるため、塗装や防水層でしっかりカバーする必要があります。
目地のシーリングや、ひび割れの補修、防水層との取り合い部分の処理など、細かい部分まで丁寧に下地処理をしておくことで、雨漏りリスクを大きく減らすことができます。
良い業者を見分けるための下地処理チェック
外壁塗装の下地処理が大切だと分かっていても、実際に工事を頼む側からは見えにくいのが難しいところです。そこで、見積もりや打ち合わせの段階でチェックできるポイントを知っておくと、信頼できる業者かどうか判断しやすくなります。
見積書に下地処理の内容が具体的に書かれているか
見積書を見るときは、「下地処理一式」とだけ書かれていないかを確認しましょう。高圧洗浄、ひび割れ補修、シーリング打ち替え、ケレン・サビ止めなどが、きちんと項目として分かれている見積もりの方が、工事内容が明確で安心です。
また、使用する材料名や施工範囲、シーリングの打ち替えなのか打ち増しなのかといった点まで説明してくれる業者は、下地処理の重要性を理解していると言えます。
現地調査や写真での説明が丁寧か
現地調査の際に、外壁の状態を写真で記録しながら説明してくれるかどうかも大切なポイントです。ひび割れやサビ、シーリングの劣化箇所を一緒に確認し、「ここはこのように補修します」と具体的に教えてくれる業者は、下地処理に力を入れている可能性が高いです。
工事後もビフォーアフターの写真を提供してくれる会社であれば、実際にどのような下地処理が行われたのかを後から確認できるので、より安心して任せられます。
保証内容とアフターフォロー
最後にチェックしたいのが、保証内容とアフターフォローです。外壁塗装の下地処理が適切に行われていれば、塗膜が短期間で剥がれることは基本的にありません。逆に、すぐにトラブルが出る場合は、どこかに問題があった可能性も考えられます。
工事後に不具合が出たとき、どこまで無償で対応してくれるのか、保証期間はどのくらいかを事前に確認しておきましょう。定期点検をしてくれる会社であれば、劣化の進行を早めに発見できるため、安心感も高まります。
外壁塗装の下地処理は、完成した姿からは見えない部分ですが、建物の寿命やメンテナンス費用に大きく影響する重要な工程です。これから塗り替えを検討されている方は、価格や仕上がりのイメージだけでなく、「どこまで下地処理をしてくれるのか」にもしっかり目を向けてみてください。丁寧な下地処理と適切な塗料選びができれば、外壁塗装はきっと満足度の高いリフォームになります。
